建設DXとは?今、建設DX担当者が押さえるべきこと3選(2024年版)
ズバリ「建設DX」とは、建設業界においてデジタル技術を活用して業務プロセスや事業モデルを革新し、効率化や生産性向上を図る取り組みのことです。業界の流行を取り入れるために今、建設DXの担当者が押さえるべきこと、「DXで使われる技術」、「なぜ、建設現場でDX化が進められているのか」、「建設DXの導入事例」を解説いたします。
そもそもDXとは何か?
今、建設DX担当者が押さえるべきこと3選
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、これまでの「デジタル化」や「IT化」とは一線を画す概念です。
デジタル化は、アナログ情報をデジタル形式に変換し、処理や管理を効率化することです。例えば、紙の書類をスキャンしてPDFにするなどがこれに当たります。
IT化は、主に既存の業務プロセスを効率化するために情報技術を導入することであり、局所的な改善が中心です。例えば、紙媒体の書類送付を電子メールにする、人事管理を紙でなくエクセルで行うことがこれに当たります。これにより、業務効率化と省力化が実現されます。
これらに対して、DXとは「デジタル技術を活用して業務プロセスを根本から見直し、課題解消や働き方改革、生産性向上を図ること」です。
ここで重要なのは、DXは単に作業を効率化するのではなく、業務プロセスや事業モデルを革新し、持続的な生産性向上を図る取り組みだということです。また、人手不足という社会的課題に対応し、省人化を促進する側面も持っています。
請求書発行業務を例に挙げると、紙の請求書をデジタルデータで送付することは「デジタル化」とされます。また、その受け渡しや管理をソフトウェアツールで行うことを「IT化」と言います。
一方で、請求書業務のDX化では、請求書データが自動的に会計データに紐づけられ、支出管理が自動で行われることで業務プロセスが変化したり、請求書データの分析を通じて無駄な支出を削減する提案が行われるなど、ビジネスに直接的な影響を与える変革を起こすことができれば「DX化」と言えます。
このようなDX化は、技術継承や新しい働き方の実現に寄与するため、IT化やデジタル化に比べて短期的には難易度やコストが高いものの、長期でみればその効果は大きいと期待されます。
2024年最新版!
いま建設DX担当者が押さえるべきこと3選
残業時間の上限が設定されたことにより、2024年問題に直面している建設業界では、「働き方改革」への取り組みがますます重要になっています。このような状況の中で、建設DX担当者が把握すべき重要ポイントを以下の3点に分けて詳しくご紹介します。
1.DXで使われる技術
2.なぜ、建設現場でDX化が進められているのか
2.1 建設DX導入の難しさ
2.2 それでもDX化が必要な理由
3.建設DXの導入事例
1.DXで使われる技術
建設DXに使われるデジタル技術をご紹介します。
リモート
リモートとは、離れた場所から仕事をすることを指します。例えば、オフィスにいなくても自宅や他の場所からインターネットを使って仕事をすることです。これにより、現場にいないスタッフもプロジェクトに参加できます。
5G
5Gは、最新の高速で安定したインターネット通信技術です。これにより、現場から大量のデータを迅速に送受信できます。例えば、ドローンが撮影した高解像度の映像をリアルタイムで送信することができます。
AI / 機械学習
AI(人工知能)と機械学習は、コンピュータがデータを分析して賢くなる技術です。例えば、工事の進行状況を予測したり、リスクを事前に察知したりすることができます。これにより、計画通りに工事を進めやすくなります。
IoT
IoT(モノのインターネット)は、機器やセンサーがインターネットに繋がってデータをやり取りする技術です。例えば、現場の機械の稼働状況をリアルタイムで監視し、故障を早期に発見できます。
SaaS
SaaS(サービスとしてのソフトウェア)は、インターネット経由でソフトウェアを利用することです。例えば、工事管理ソフトをインターネットを通じて使うことで、どこからでもアクセスできるようになります。これにより、ソフトのインストールや更新が不要になります。
クラウド
クラウドとは、インターネット上にデータやソフトウェアを保存し、どこからでもアクセスできる仕組みです。例えば、図面やプロジェクトの資料をクラウドに保存しておけば、現場でもオフィスでも同じ情報を共有できます。
ドローン
ドローンは、無人の飛行機械で、空からの映像や写真を撮影できます。これにより、広い現場の状況を短時間で把握することができます。高所の点検や測量にも利用されます。
BIM/CIM
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は、建物やインフラのデジタル3Dモデルを作成する技術です。これにより、設計から施工、管理までのプロセスを一元管理できます。例えば、設計図面を3Dモデルで確認しながら施工することで、ミスを減らせます。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングは、コンピュータの処理能力をインターネット上のサーバーで行う技術です。これにより、現場で高性能なコンピュータを用意する必要がなくなり、手軽に高性能なデータ処理ができます。例えば、大量のデータを解析して工事の進捗を管理することができます。
2.なぜ、建設現場でDX化が進められているのか
現場はどこも人手不足の課題を抱え、仕事を受けてくれる受注業者や職人の確保が難しくなっています。
リクルートワークス研究所の「未来予想2040」によれば、生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなる「労働供給制約社会」になると予想されています。
社会サービスを維持するのに十分は人手が確保できず、サービスの享受を諦めなければいけない領域も出てくるでしょう。
建設業はその筆頭に挙げられる業界のひとつです。DXが世の中で叫ばれているのは、単にテクノロジーが進化したからではなく、社会構造の変化に対してDXが必須となっているからです。
以下では、特に人手不足が予想される建設業において、建設DXを実現する上で直面する建設DX導入の難しさと、それでも乗り越えて建設DXを進めなければいけいない理由について説明します。
2.1 建設DX導入の難しさ
長期的に見れば投資する価値のある建設DXですが、短期で見るとコストや手間が増加し、現場に負担をかける側面もあります。特に建設業のDXは他の産業に比べて特に導入のハードルが高いとされています。その背景には業界特有の障壁が存在します。
まず、建設業界は他業界に比べてDXに対する意識・理解が遅れていると言われています。事実、DXの「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業の割合は建設業でわずか11.4%にとどまり、これは他の業界と比べても低い数値です。
出典 株式会社帝国データバンクが実施した「DX推進に関する企業の意識調査(2022年1月)
次に、建設業界では「アナログ代替」の難しさが挙げられます。数値データを扱う会計業務と異なり、現場では物理的な物体や目視作業、図面などのアナログデータを取り扱うことが多く、アナログをデジタルに置き換えることは、多くの技術的・実務的課題を伴います。アナログの方法が長年にわたり業界標準とされてきたため、その習慣を変え、デジタルに移行していくことは容易ではありません。
さらに、「下請け構造」もDXの導入を複雑にしています。多くの建設プロジェクトは、主契約者と多数の下請け企業との間で成り立っており、これら全ての企業がDXを同時に進めなければ、導入の効果は限定的になる恐れがあります。このため、業界全体での協調が不可欠です。
また、「設備投資」の面では、特に必要とされるソフトウェアやハードウェアのコストが高額になることが問題となっています。初期投資の大きさが、特に中小企業にとって大きな負担となり得ます。
最後に、「DX人材の確保」も大きな課題です。デジタルスキルを持った技術者や管理者を確保することは、技術革新が急速に進む中でさらに困難になっています。建設業界では特に、伝統的な技術や知識が重んじられがちで、最新のデジタル技術に精通した人材が不足しているのが現状です。
これらの課題を乗り越えるためには、業界全体での意識改革、教育・研修の強化、そして技術投資に対するインセンティブの提供が求められます。
しかし、このような数々の壁を超えてでもなお、建設DXを推進していかなければならない理由があります。
2.2 それでもDX化が必要な理由
2000年に653万人いた建設業従事者は、2040年には-56%の287万人まで減少します。一方、仕事量の指標となる建設投資額は2021年から2025年にかけて約9兆円増加します。
加えて、一人当たりの労働時間は働き方改革法案の施行によって制限されるので、「少ない人数で、より多くの現場を回していく」必要があり、建設業が未曾有の人手不足になる未来はほぼ確実にやってきます。
現在はまだ序章であり、今後ますます人手不足は深刻になるでしょう。そのような状況において、ひとり当たりの生産性の向上を実現する建設DXは必須です。
また、建設従事者の年齢分布を見ても分かるように、いまの建設現場はベテラン技術者によって支えられています。しかし、このベテラン技術者の方々も数年後には徐々に引退していき、さらに人手不足を加速させます。このような方々は高い技術力を持っており、現場で重宝される存在です。
しかし、その技術は属人的なものとなり、その人でなければできない、その人が現場にいないと分からないことも多く存在します。そのような技術承継もDXで解決すべき課題の一つでもあります。
また、採用や教育の面でもDXは重要です。給与と働き方のバランスに対する考え方は、世代によって大きく異なります。Job総研の調査によれば、20代の7割以上は仕事に対して、給与より働きやすさを求めています。
また、教育についても「数十年の現場経験を経てやっと一人前」「背中を見て覚えろ」という教育スタイルは今の若手の価値観とは合わなくなっています。部下をよく観察し、話をよく聞き、ひとりひとり丁寧なケアをするサポート型コミュニケーションが上司には求められています。
このような働き方の改革や教育改革にはデジタルテクノロジーが大いに役立ちます。
政府はこの未来を見越して、建設業全体のDXが推進されるよう、様々な優遇措置を行っています。日本の国土交通省は、公共工事の入札プロセスにおいて、IT技術を活用した施工計画を提案する企業に対して評価加点を与える制度を導入しています。
また、デジタル技術による社会変革に対して経営者に求められる事項を取りまとめた「デジタルガバナンス・コード」に対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する「DX認定制度」があります。
認定事業者は「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」とされ、自社をアピールしたり、公的な支援措置を受けることができます。これらの制度のメリットは作業効率の向上や工期短縮・コスト削減に留まらず、重労働の軽減や労働環境の改善にも寄与し、若年層や女性の建設業界への参入促進にもつながるでしょう。
3.建設DXの導入事例
ここでは建設DXの導入事例を3つご紹介します。
①:平賀建設有限会社
平賀建設有限会社は、ICTを全面的に活用した建設プロセス「i-Construction」を導入し、建設業界におけるデジタル変革の先駆者として注目されています。この取り組みは、3次元測量、設計・施工計画、ICT建設機械の運用、そして検査の省力化に至るまで、一連の建設工程を効率化し、生産性を飛躍的に向上させています。
ドローンによる3次元測量
平賀建設は、ドローンを活用して現場の3次元測量を行っています。この技術により、広範囲の地形を短時間で正確に把握し、それを基に詳細な地形データを生成することが可能です。この迅速かつ高精度なデータ収集は、設計段階での精度向上に直結し、後の施工計画の精密化を実現します。
3次元測量データによる設計・施工計画
収集した3次元測量データを基に、より詳細かつ効率的な設計・施工計画が立てられます。このプロセスにおいて、ICTを駆使したシミュレーションにより、事前に問題が発見され、計画段階での修正が可能となり、施工時の手戻りリスクとコストを大幅に削減します。
ICT建設機械による施工
ICT建設機械の導入により、設計データは直接機械に送信され、例えば、マシンガイダンスを利用した重機は、事前にプログラムされたパラメータに従って自動で精確な掘削や整地を行います。この自動化により、人的ミスが削減され、施工の精度と速度が向上します。
検査の省力化
検査工程も大きく効率化されています。ドローンなどによる3次元測量を活用した検査などにより、出来形の書類が不要となり、検査項目を削減することができます。
このように、平賀建設有限会社のi-Constructionの取り組みは、建設プロセス全体にわたってデジタル技術を活用し、その効果を最大限に引き出しています。これにより、同社は建設業界における生産性の向上だけでなく、働き方改革にも貢献しており、他の建設会社にとっても模範となる実践例を提供しています。
(出典:平賀建設有限会社 ウェブサイト)
②:西松建設株式会社
西松建設株式会社は、建設業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するため、「山岳トンネル AI ソリューション」を開発しました。このソリューションの中核をなす「掘削サイクル判定システム」は、AIを活用して山岳トンネルの掘削作業を自動で評価する技術です。このシステムは特に、切羽性状の自動評価、若手職員のサポート、観察時間の短縮、および評価の偏りの低減という点で大きなメリットを提供します。
AIによる切羽性状の自動評価
西松建設のAIソリューションは、ネットワークカメラを通じて得られる映像データを利用し、穿孔、装薬、発破、ずり搬出などの切羽作業をAIが自動で評価します。これにより、従来人の目で行われていた切羽の状態評価をAIが代行することで、一貫性があり客観的な評価が可能となります。
若手職員のサポート
AI技術の導入により、経験豊富な技術者が直接現場にいなくても、若手職員がAIのサポートを受けながら安全かつ正確に作業を進めることができます。これにより、若手職員は迅速に作業手順を学び、熟練度を高めることが可能になります。
切羽観察時間の短縮
AIによる自動評価システムは、昼夜を問わず連続して掘削サイクルを監視し、判定します。これにより、人手による断続的な監視に比べて大幅に観察時間を短縮し、生産性の向上を実現します。
掘削サイクルデータの活用と連携
掘削サイクルをデータ化することで、他のシステムや機械と簡単に連携が可能です。これにより、例えば切羽作業に応じて送風機の出力を調整したり、坑内の重機を自動で制御するための入力データとして利用することができるようになります。
このように、「山岳トンネル AI ソリューション」は、AI技術を活用して建設現場の課題を解決し、作業の自動化、若手職員の早期育成、効率的な作業進行、そしてより公正な評価という複数の面で業界に革新をもたらしています。
(出典 西松建設技報 VOL.43)
③:株式会社ジェイアール西日本ビルト
株式会社ジェイアール西日本ビルトが遠隔支援のビデオ通話を活用し、建設業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する様子は、他の建設業者にとっても非常に参考になる事例です。このツールは特に、鉄道関連の建築工事を手掛ける同社において、複数現場の効率的な管理や安全対策の強化に貢献しています。
遠隔支援の導入背景とその必要性
ジェイアール西日本ビルトは、福岡支店など地域によっては移動時間が膨大になるため、管理できる現場数に限界がありました。遠隔支援ビデオ通話ツールの導入により、時間とコストの削済みが可能になり、より多くの現場を効率的にサポートできるようになりました。特に、若手社員が常駐する遠隔地の現場での品質管理において、遠隔支援ビデオ通話ツールは大きな役割を果たしています。
具体的な活用事例
たとえば、鹿児島市の現場では、施主検査前の内部検査で遠隔支援ビデオ通話ツールが使用されました。
検査官は福岡にいながら、リモートでドアの塗装状態を詳細にチェックし、塗装が不十分な部分の指摘をリアルタイムで行うことができます。
これにより、物理的な距離を感じさせないほどの密接なコミュニケーションと指導が可能になり、現場の品質向上に直結しています。
シフト制の工事現場での安全対策強化
大阪支社では、シフト交代時の情報共有漏れから生じた労働災害を受けて、遠隔支援ビデオ通話ツールを利用しての引継ぎ会議が導入されました。これにより、現場の状況を全員がリアルタイムで共有し、安全対策の徹底が図られるようになりました。引継ぎミスの削減により、安全でスムーズな工事進行が実現しています。
さらなる可能性としてまた、遠隔支援ビデオ通話ツールのSynQRemoteでは「ゲストモード」機能により、アカウント登録やアプリのインストールが不要で、緊急時の迅速な対応が可能になります。これにより、専門知識がない駅員も一次確認を行えるようになるため、緊急修繕が必要な場合の初動対応が飛躍的に向上します。
このように、遠隔支援ビデオ通話ツール(SynQRemote)は建設現場の遠隔支援に革命をもたらし、より安全で効率的な作業環境を提供しています。
スマホとPCで簡単に現場調査や検査ができる
「SynQ Remote(シンクリモート)」
SynQ Remote(シンクリモート)は、建設DXを実現するための効率的な遠隔支援ビデオ通話ツールです。建設DXでは下請け構造の複雑さや登録手続きの煩雑さが障害となることがありますが、SynQ Remote(シンクリモート)はアプリのダウンロードやID登録が不要なので、誰でも迅速にシステムを利用開始できます。
また、劣悪な通信環境下でも高画質の映像を確保し、遠隔地からでも技術的な指示を明確に伝達できるため、建設現場の効率化と作業の質の向上が期待できます。言葉では伝えずらい技術的な指示も、SynQ Remote(シンクリモート)を使えば遠隔地から明確に伝えることができ、現場の確認・判断・指示を遠隔から迅速に行えるようになります。
特に、人手不足が課題の現場では、SynQ Remote(シンクリモート)を活用することで、ひとりの技術者が複数の現場を効率的に管理できるようになります。また、ベテラン技術者が新人をリアルタイムで指導し、品質と安全性を確保しながら、移動時間の削減と作業効率の向上を果たし、若手の効率的な育成も実現できます。建設DXの第一歩として「SynQ Remote(シンクリモート)」をぜひご活用ください。
下記のブログもぜひご参考にしてください。
✅【建設業向け】いよいよ4月から適用開始!働き方改革関連法まとめ
✅ 現場の遠隔導入どうやって進めた?~成功事例・失敗事例をご紹介~
✅ 遠隔導入の期待効果は?気になる稟議起案内容を解説!